次代へつながる着物
最近、着物のお直しが大変多い。しかも箪笥一棹全部とか、
『タンスノコヤシにしていたお母様』から『着物を着たい娘さんへ』というパターンが多くなってきてます。
これは着物屋冥利に尽きます。そういったときに頼りにされる事はもちろん嬉しいのですが。
何年もほっておかれた素敵な着物たちが日の目を見る機会を与えてあげる事が嬉しい。
着物は骨董品ではありません、何年寝かしても価値が出るものではありません。箪笥にしまいこんでカビだらけにしてしまっては本当の意味で無駄になります。着て初めてその着物たちは価値が出ます。
着物のお直しの基本は、
寸法直しです。
現代の娘さんはお母様世代より腕の長さが違います。
身長は同じ親子でも腕の長さが5センチ以上違います。
おまけに昔は裄(着物袖の長さ)を短めに作っていましたが、現代は少し長めに着る方が多いので生地の幅いっぱいまで裄を伸ばす事が多いです。
着物丈は打上げ(着物の真ん中、横の縫い目)の中に生地が余っていれば伸ばせます。平均身長も伸びてモデル体型の娘さんも多いので、この着物丈が合わなければその着物を復活させるのは難しいです。
あとは案外見落としがあるのが袖丈です。
昔は若いうちに作った着物は袖丈が長め作ってあります。現代では基本的に袖丈は1尺3寸(約49cm)で作ります。なんで1尺3寸なのかと言うと長襦袢の取り替えが効くからです。特に私の店では着物一枚に長襦袢一枚をわざわざ作りません。たとえば白の礼装用長襦袢を一枚作ると無地、付下、喪服にも転用可能です。ただし袖丈が違うと転用できません。その方が経済的ですしね。
お母様から娘様へ着物だけではなくて、
着物屋も受け継がれると嬉しいです。