男着物の裄と抱き幅と身幅の関係らしきもののまとめ
久しぶりに着物屋らしい内容でブログ更新。
ちなみに
同じような話題を昔に書いてます。この反物は男物?女物?
最近やせ形腕長の着物男子のお世話をすることが多くて、
身幅はちょうどいいのに衿元がガバガバになったり、
裄が長いせいで反物との折り合いが悪くなる話を、
よく耳にするのでまとめてみた。
おもに男着物についてなので女性の方は嫁のブログにでも質問してあげて下さい。たぶん答えます。
1.身幅(前幅、後幅、おくみ)と抱き幅の関係
まずは身幅を採寸するときには腰のあたり(ウエストではない)
で採寸するわけですけど、出来あがる着物では
裾の先が身幅の寸法になるわけです。
そこから肩先に向かって抱き幅、肩幅となっていくのですが、
着物はワンピース状の衣類な訳で、
あまりに裄(肩幅+袖幅)が長いと斜めに広がって上がっていかざるを得ない
つまり体型次第で抱き幅の部分ですでに採寸した寸法と違う事がある、
そうした場合、衿元がガバガバになる。
仕立てる時でも古着を探すときでも身幅は気にしても、
案外見落としがちなのが抱き幅。
とくに男性の場合、
帯の位置が衿から遠くなるために、
やせ形とくに胸板の薄い男性ならなおさら
衿元の着崩れの原因になりやすい。
2.抱き幅と裄(肩幅+袖幅)の関係
最近の男着物では広幅(40センチ以上)の反物を、
探して仕立てるのが普通になっています。
なぜなら最近の男性は明らかに腕の長さが長く、
さらに長袖の洋服に慣れているので
着物に対しても袖を長めに着たい方が増えています。
裄は肩幅+袖幅で((反物幅×2)−縫いしろ)が、
その反物の最大裄になる訳ですが、
肩幅と抱き幅の位置が近すぎるため、
抱き幅と肩幅の差がつけにくい、
肩幅が広くなれば必然的に抱き幅が広くなって、
やせ形の男性は胸元がガバガバになってしまう訳です。
さらにやせ形だと身幅を多く取らないために、
脇縫いに入り込む布が多くなる。
脇縫いに多くの布が入りこむと脇がゴワゴワして着にくくなり、
さらに帯、腰紐のキープ力も分散してしまい、
帯の緩み着崩れの最大原因になりうる。
3.袖を継ぐことについて
では肩幅を身幅に限りなく近くして、
さらに理想の裄を実現させるにはどうしたらよいか?
袖幅を増やせば何とかなる(柄による)
大河ドラマなどを最近の画質の良いテレビでみると袖を継いでますね。
龍馬伝などでは福山龍馬は黒紋付でも袖を継いでました。
私の経験ですが、
袖を継ぐことを提案しても受け入れてもらえない事が多く、
袖を継いだら着物の形が崩れると思ってる方が多いのですが、
無理に身幅から肩幅までが広がった着物の方が形としては崩れています。
無理に斜めに縫い上げている着物は、
勿論縫い目通りに畳む事はできません。
そうなれば変な折り目が出来てしまい、
着物を着た時に一番目立つ前幅の部分に、
おかしな折り目が出来てしまします。
それぐらいなら袖に縫い目が一本増える方が目立ちません。
必然的に袖に縫い目が二つになりますが、
着た時には案外目立たないものです。
ハンガーに掛けたみたいに腕を横に広げて着ないでしょ?
普通に着た時の着ジワにまぎれてわかんなくなります。
さらに袖を継げば、
腕の長い方でも並幅の反物を着物にすることができる。
(限界はありますが)
やせ形で広幅反を使えば、
どうしても脇縫いのところが大量に余るので、
それを袖に継ぐ訳です。
4.総括
最近、男着物が見直されている事情から、
男性着物を縫う縫い子(仕立て師)さんも増えてきましたが、
身八ツ口がなくて丈が短いのが男性の着物と思ってる縫い子さんも多く、
袖を継ぐと言ってもどーやってやるの?聞かれます。
もちろんそういった知識がない着物屋も多いです。
女性着物とは根本的に構造が違うというのを理解して、
男性にも色んな着物をアプローチ出来るデータを蓄積させてる、
信頼できるお店、仕立て師さんと話し合いは大事なんだと思う。
もちろん私の店ではそういう相談に乗ってます
んでも柄物(横段とか絣など)になったら上手く柄合わせしないといけない。古着とかなら物理的に無理がある。
どうやっても衿がガバガバするんだけどとか、
これは!と思った反物が並幅でも諦めないで、
袖を継ぐっていう選択肢があるんだよーぐらいで考えてほしい。
まとまってないまとめ